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治療を受けた動物たち

● 腎不全

“腎不全”ワンちゃんや猫ちゃんがお家にいる方々にとって一度は耳にした事のある言葉ではないでしょうか?“腎”というのはもちろん腎臓のことで、“不全”とは働かなくなる・機能しなくなるというような意味があります。つまり“腎不全”とは腎臓が機能しなくなった状態であると考えてください。
腎臓の機能を簡単に説明すると、私たち動物は生きていく上で色々なもの(空気・水・食物など)を体内へ取り入れ、必要なものだけをエネルギーとして消費しています。しかし、車がガソリンで動けば排気ガスを排出するように、動物も尿や便を体外へ排出する必要があるのです。
腎臓ではこの尿が作られます、“血液中に流れる物質の中から必要のないものだけを体外へ排出する”このことが腎臓の大きな役割です。そのほかにも、電解質(イオン)バランスの調節や血圧の調節などここでは挙げきれないほどの能力を持っており、またそのことから腎不全では色々な異常が生じてきます。
腎不全
腎不全時の腎臓
萎縮し、表面が不整になっています。

一般的に腎不全は
  1. 腎前性腎不全
    (腎臓の機能は正常だが腎臓への血流が不十分な状態)
  2. 腎性腎不全
    (腎臓自体の機能低下)
  3. 腎後性腎不全
    (尿が出ない状態)
に分類され、当然治療もそれぞれ異なってくるのです。これらの診断は主に身体検査・血液検査・尿検査によってなされますが、今回は 2. の腎不全(特に慢性腎不全)について解説したいと思います。
この腎不全は、中毒・感染症(急性)加齢・糖尿病(慢性)などによって腎臓自体が破壊された結果、機能が低下する病態です。
なかでも、慢性腎不全は動物たちが長く生きられるようになった現在では非常に罹患率が増加し、特に 15 歳以上の猫ちゃんの 80 % 以上はこの病気で亡くなるという報告もされています。まず、この病気の症状・兆候ですが、少しづつ痩せる・毛がパサついてくる・飲水量、尿量が増えるなどが初期症状として現れ、悪化すると食欲低下・嘔吐・明らかな脱水などの重篤な症状が発現します。“しかし”腎臓は十分な予備能力を持つため 75 % の機能が障害を受けないと臨床的な症状を発現しません。別な言い方をすれば、何か症状が出てきたときには、その時点で正常な腎臓は 25 % しか残っていないという事が出来るのです。
当然、これらの兆候や症状が見られた際には動物病院での診察・血液検査・尿検査・レントゲン・超音波検査により腎不全の診断が確定されることは多いと思われます。
それでは兆候や症状が現れるまでには何に気をつければよいのでしょうか?
1. 定期健診。いくら元気に過ごしている時でも定期的に病院へ通院し、血液検査・尿検査などの定期健診を受けることをお勧めします。特に尿検査では、血液検査よりも速く異常を検出でき、しかも安価です。定期健診を受ける頻度は成年期と呼ばれる 7 歳までは年に 1 度、老齢期であるそれ以降は半年に1度、特に 15 歳以上などの高齢になる場合は 3 ヶ月に1度が理想的だと思われます。多いと思われるかもしれませんが、動物は 1 年で人間の 4 年分の年齢を重ねます。体の老齢化・病気の進行も 4 倍早いと考えてください。つまり 3 ヶ月に 1 度の定期健診でも人間で言えば 1 年に 1 度、決して多くはありません。
2. 食餌管理。年齢にあわせた食餌管理を心がけてください。特に腎不全ではその進行を抑えるため、塩分やタンパク質を控えた食餌が必要となります。定期健診時に体重管理と併せて獣医師、看護士に相談していただき、適切な食事管理に対するアドバイスを受けてください。
最後に腎不全時の治療ですが、腎臓は組織の再生能力が低く 1 度障害を受けるとほとんど元に戻ることは出来ません。人医学で行われている最善の療法は腎移植だと思われます。しかし、獣医療においてドナーの問題、適合性、免疫抑制などさまざまな問題が多く、いまだ現実的な治療ではありません。
結論的に現在一般的に行われている腎不全に対する治療は“悪くなった腎臓に対する治療”ではなく、“腎臓が悪くなったことによって起こる体の様々な異常に対する治療”と“更なる進行の抑制”だと理解してください。そのためには、食餌管理・点滴・投薬など各種の治療がありますのでかかりつけの獣医師に相談してください。
最後にやはり大事なのは、適切な食餌管理による病気の予防と定期的な健康診断であると考えています。
腎不全
腎不全時の皮下点滴の様子
(文責 獣医師 王寺)

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