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治療を受けた動物たち

● 外傷性横隔膜ヘルニア

1 歳、雌の日本猫、桜ちゃんは、半年前に子猫と一緒に拾われた幸運な猫ちゃんで、子猫も大きくなったので避妊手術をしてほしいということで、来院されました。
来院した時の桜ちゃんは、体全体で呼吸をしており、かなり苦しそうな様子でした。
飼い主さんの話によると、他院にて「横隔膜ヘルニア」であると診断されたことがあるということでした。

呼吸は苦しそうなのですが、元気食欲はあるということでした。
身体検査から、桜ちゃんが非常に痩せていること、聴診から肺音の異常と心音の減弱が認められました。
そこで、手術を行う前に、胸部レントゲン検査により肺と心臓の評価を行いました。
外傷性横隔膜ヘルニア 外傷性横隔膜ヘルニア
左:写真 1)背腹方向からのレントゲンから、左の肋骨が変形しているのも認められます。

上:写真 2)側方方向からのレントゲンから、腹部の臓器が横隔膜を超えて胸部に入り込んでいるのが認められます。
レントゲン検査から、肋骨の変形(写真 1 )から以前に事故か何かの外傷を受けたあとがあること、その外傷が原因と思われる非常に重度の横隔膜ヘルニア(写真 2 )が認められました。
★ 横隔膜ヘルニアとは
横隔膜は胸部の臓器(心臓、肺など)と腹部の臓器(胃腸、肝臓、脾臓、腎臓など)を分ける膜のことであり、主に呼吸を行うのに重要な働きをしています。
横隔膜ヘルニアは、その横隔膜の本来存在しない異常な開口部から腹部臓器が胸腔に飛び出すことを言い、後天性あるいは先天性に発生します。後天性の外傷性横隔膜ヘルニアが最も多くみられます。交通事故など急激に圧力が加わることによって、横隔膜が裂け異常な開口部が形成され、横隔膜ヘルニアになってしまいます。
飼い主さんには、手術によって、命を落としてしまうかもしれない危険性があること。しかし横隔膜ヘルニアは放置しておいて治るものではなく、進行性でいつ突然死を起こしてもおかしくないことから、手術によって整復することが必要であることを説明し、手術を行うことにしました。

3 日後、手術によって横隔膜ヘルニアの整復を行いました。幸い、胸の中に入り込んだ腹腔の臓器はそれほど障害をうけておらず、胸部に癒着していた部分もわずかであり、腹部からひっぱることで整復することが出来ました。整復したのち、腹部臓器のほとんどが通過してしまうほどの横隔膜の裂けた部分を閉鎖しました。
胸腔内に液体や気体が蓄積することによる、呼吸困難を防ぐため、術後3日間は胸腔にチューブを設置し、液体と気体の抜去を行いました。
外傷性横隔膜ヘルニア
外傷性横隔膜ヘルニア
左:写真 3)腹部の臓器が入り込んでいた左側の肺はまだ小さいままではあります。

上:写真 4)腹部の臓器が胸部から戻されたことで、心臓の陰影が認められるようになっています。
横隔膜ヘルニアは、急性期には呼吸が出来なくなり、亡くなってしまうことが多く、慢性化すると整復が困難になり、致死率が高くなると言われています。今回、桜ちゃんの横隔膜ヘルニアは、経過が長く慢性化していたにも関わらず、回復してくれたのは、腹部臓器が胸腔内に完全には癒着していなかったという幸運のためでありました。
猫ちゃんが家を飛び出して、2-3日帰ってこなかったあと、元気がない。さらには呼吸が苦しそうであればすぐに病院で検査してもらうことをお勧めします。

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